【自民党憲法改正草案】見やすい対照表で現憲法との違いが分かる!

現行憲法と自民党の憲法改正草案を比較する。憲法改正草案とQ&Aは、自民党公式HP上のPDF 『憲法改正草案 Q&A』より転載。

憲法改正草案 第1条 (天皇)

(天皇)
自民党改憲案第一条
天皇は、日本国の元首であり
日本国及び日本国民統合の象徴であって、
その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
現行憲法第一条
天皇は、日本国の象徴であり
日本国民統合の象徴であつて、
この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

【Q4】
「日本国憲法改正草案」では、天皇を「元首」と明記していますが、これについてどのような議論があったのですか?

【自民党の答】
 憲法改正草案では、1条で、天皇が元首であることを明記しました。元首とは、英語では Head of State であり、国の第一人者を意味します。明治憲法には、天皇が元首であるとの規定が存在していました。また、外交儀礼上でも、天皇は元首として扱われています。したがって、我が国において、天皇が元首であることは紛れもない事実ですが、それをあえて規定するかどうかという点で、議論がありました

 自民党内の議論では、元首として規定することの賛成論が大多数でした。反対論としては、世俗の地位である「元首」をあえて規定することにより、かえって天皇の地位を軽んずることになるといった意見がありました。反対論にも採るべきものがありましたが、多数の意見を採用して、天皇を元首と規定することとしました。

憲法改正草案 第7条 (摂政)

(摂政)
自民党改憲案第七条
皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、
摂政は、天皇の名で、その国事に関する行為を行う。


第五条及び前条第四項の規定は、摂政について準用する。
現行憲法第五条
皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、
摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。


この場合には、前条第一項の規定を準用する。


憲法改正草案 第8条 (皇室への財産の譲渡等の制限)

(皇室への財産の譲渡等の制限)
自民党改憲案第八条
皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、
若しくは賜与するには、法律で定める場合を除き、
国会の承認を経なければならない。
現行憲法第八条
皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、
若しくは賜与することは、
国会の議決に基かなければならない。


憲法改正草案 第9条 (平和主義)

(平和主義)
自民党改憲案第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
国権の発動としての戦争を放棄し
武力による威嚇及び武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては用いない


前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

現行憲法第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
国権の発動たる戦争と、
武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。


前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、
これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

【Q7】
「日本国憲法改正草案」では、9条1項の戦争の放棄について、どのように考えているのですか?

【自民党の答】
 現行憲法9条1項については、1929年に発効したパリ不戦条約1条を翻案して規定されたものであり、党内議論の中で「もっと分かりやすい表現にすべきである。」という意見もありましたが、日本国憲法の三大原則の一つである平和主義を定めた規定であることから、基本的には変更しないこととしています。

 ただし、文章の整理として、「放棄する」は戦争のみに掛け、「国際紛争を解決する手段として」は戦争に至らない「武力による威嚇」及び「武力の行使」にのみに掛ける形としました。19世紀的な宣戦布告をして行われる「戦争」は国際法上既に一般的に「違法」とされていることを踏まえた上で、法文の意味をより明確にするという趣旨から行った整理です。

 このような文章の整理を行っても、9条1項の基本的な意味は、従来と変わりません。新たな9条1項で全面的に放棄するとしている「戦争」は、国際法上一般的に「違法」とされているところです。また、「戦争」以外の「武力の行使」や「武力による威嚇」が行われるのは、
 ①侵略目的の場合
 ②自衛権の行使の場合
 ③制裁の場合
の3 つの場合に類型化できますが、9条1項で禁止されているのは、飽くまでも「国際紛争を解決する手段として」の武力行使等に限られます。この意味を①の「侵略目的の場合」に限定する解釈は、パリ不戦条約以来確立しているところです。

 したがって、9条1項で禁止されるのは「戦争」及び侵略目的による武力行使(上記①)のみであり、自衛権の行使(上記②)や国際機関による制裁措置(上記③)は、禁止されていないものと考えます。


【Q8】
 戦力の不保持や交戦権の否認を定めた現9条2項を削って、新9条2項で自衛権を明記していますが、どのような議論があったのですか?
また、集団的自衛権については、どう考えていますか?

【自民党の答】
 今回、新たな9条2項として、「自衛権」の規定を追加していますが、これは、従来の政府解釈によっても認められている、主権国家の自然権(当然持っている権利)としての「自衛権」を明示的に規定したものです。この「自衛権」には、国連憲章が認めている個別的自衛権や集団的自衛権が含まれていることは、言うまでもありません。

 また、現在、政府は、集団的自衛権について「保持していても行使できない」という解釈をとっていますが、「行使できない」とすることの根拠は「9条1項・2項の全体」の解釈によるものとされています。このため、その重要な一方の規定である現行2項(「戦力の不保持」等を定めた規定)を削除した上で、新2項で、改めて「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と規定し、自衛権の行使には、何らの制約もないように規定しました。もっとも、草案では、自衛権の行使について憲法上の制約はなくなりますが、政府が何でもできるわけではなく、法律の根拠が必要です。国家安全保障基本法のような法律を制定して、いかなる場合にどのような要件を満たすときに自衛権が行使できるのか、明確に規定することが必要です。この憲法と法律の役割分担に基づいて、具体的な立法措置がなされていくことになります。

憲法改正草案 第12条 (国民の責務)

(国民の責務)
憲法改正草案第十二条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、
国民の不断の努力により、保持されなければならない。
国民は、これを濫用してはならず、
自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し
常に公益及び公の秩序に反してはならない
現行憲法第十二条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、
国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。
又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、

常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

【Q14】
「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に変えたのは、なぜですか?

【自民党の答】
 従来の「公共の福祉」という表現は、その意味が曖昧で、分かりにくいものです。そのため学説上は「公共の福祉は、人権相互の衝突の場合に限って、その権利行使を制約するものであって、個々の人権を超えた公益による直接的な権利制約を正当化するものではない」などという解釈が主張されています。

 今回の改正では、このように意味が曖昧である「公共の福祉」という文言を「公益及び公の秩序」と改正することにより、憲法によって保障される基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにしたものです

 なお、「公の秩序」と規定したのは、「反国家的な行動を取り締まる」ことを意図したものではありません。「公の秩序」とは「社会秩序」のことであり、平穏な社会生活のことを意味します。個人が人権を主張する場合に、他人に迷惑を掛けてはいけないのは、当然のことです。そのことをより明示的に規定しただけであり、これにより人権が大きく制約されるものではありません


【参考】
「公共の福祉」と「公益及び公の秩序」の違いについて

憲法改正草案 第14条 (法の下の平等)

(法の下の平等)
憲法改正草案第十四条
全て国民は、法の下に平等であって、
人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、
政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


華族その他の貴族の制度は、認めない。


栄誉、勲章その他の栄典の授与は、
現にこれを有し、
又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
現行憲法第十四条
すべて国民は、法の下に平等であつて、
人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、
政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


華族その他の貴族の制度は、これを認めない。


栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。
栄典の授与は、現にこれを有し、
又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。


憲法改正草案 第15条 (公務員の選定及び罷免に関する権利等)

(公務員の選定及び罷免に関する権利等)
憲法改正草案第十五条
公務員を選定し、及び罷免することは、
主権の存する国民の権利である。


全て公務員は、全体の奉仕者であって、
一部の奉仕者ではない。


公務員の選定を選挙により行う場合は、
日本国籍を有する成年者による
普通選挙の方法による。


選挙における投票の秘密は、侵されない。
選挙人は、その選択に関し、
公的にも私的にも責任を問われない。
現行憲法第十五条
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、
国民固有の権利である。


すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、
一部の奉仕者ではない。


公務員の選挙については、
成年者による
普通選挙を保障する。


すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。
選挙人は、その選択に関し
公的にも私的にも責任を問はれない。


憲法改正草案 第17条 (国等に対する賠償請求権)

(国等に対する賠償請求権)
憲法改正草案第十七条
何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、
法律の定めるところにより、
国又は地方自治体その他の公共団体に、
その賠償を求めることができる。
現行憲法第十七条
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、
法律の定めるところにより、
国又は公共団体に、
その賠償を求めることができる。


憲法改正草案 第18条 (身体の拘束及び苦役からの自由)

身体の拘束及び苦役からの自由)
憲法改正草案第十八条
何人も、その意に反すると否とにかかわらず、
社会的又は経済的関係において身体を拘束されない



何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、
その意に反する苦役に服させられない。
現行憲法第十八条
何人も、
いかなる奴隷的拘束も受けない。

又、
犯罪に因る処罰の場合を除いては、
その意に反する苦役に服させられない。


憲法改正草案 第20条 (信教の自由)

(信教の自由)
憲法改正草案第二十条
信教の自由は、保障する。
国は、いかなる宗教団体に対しても、
特権を与えてはならない



何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に
参加することを強制されない。


国及び地方自治体その他の公共団体は、
特定の宗教のための教育
その他の宗教的活動をしてはならない。
ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を
超えないものについては、この限りでない。
現行憲法第二十条
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。
いかなる宗教団体も、
国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。


何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に
参加することを強制されない。


国及びその機関は、
宗教教育
その他いかなる宗教的活動もしてはならない。



【Q19】
その他、国民の権利義務に関して、どのような規定を置いたのですか?

【自民党の答】
(1)国等による宗教的活動の禁止規定の明確化(20条3項)

 国や地方自治体等による宗教教育の禁止については、特定の宗教の教育が禁止されるものであり、一般教養としての宗教教育を含むものではないという解釈が通説です。そのことを条文上明確にするため、「特定の宗教のための教育」という文言に改めました。
 さらに、最高裁判例を参考にして後段を加え、「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないもの」については、国や地方自治体による宗教的活動の禁止の対象から外しました。これにより、地鎮祭に当たって公費から玉串料を支出するなどの問題が現実に解決されます。



【参考】 津地鎮祭訴訟
 津地鎮祭訴訟は、三重県津市で市立体育館建設の際に行われた地鎮祭をめぐり、日本国憲法第20条に定められた政教分離原則に反するのではないかと争われた行政訴訟。
最高裁判所 昭和52年7月13日大法廷判決
 わが憲法の前記政教分離規定の基礎となり、その解釈の指導原理となる政教分離原則は、国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、国家が宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いが右の諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものであると解すべきである。(中略)

 (憲法二〇条三項の禁止する宗教的行為とは)およそ国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いをもつすべての行為を指すものではなく、そのかかわり合いが右にいう相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであつて、当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解すべきである。

 本件起工式は、宗教とかかわり合いをもつものであることを否定しえないが、その目的は建築着工に際し土地の平安堅固、工事の無事安全を願い、社会の一般的慣習に従つた儀礼を行うという専ら世俗的なものと認められ、その効果は神道を援助、助長、促進し又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められないのであるから、憲法二〇条三項により禁止される宗教的活動にはあたらないと解するのが、相当である。